サフィールとサフィールノワール
本日はサフィールのクリームについてのお話です。
当店でのケアは基本的にサフィールのクリームを使用しています。その中でよく聞かれることがサフィールの「ビーズワックスファインクリーム」とサフィールノワールの「クレム1925」違いや使い分け方について。
おそらく皆様のイメージではサフィールの上位ブランドがサフィールノワールで価格は高いけどその分高級な成分が含まれていてツヤも出る
って感じだと思います。まあ大雑把に言えばそれで合ってます。
ただ当店ではメニューや靴によって明確にこの2つのクリームを使い分けています。
それはなぜか。それがこの2つのクリームを解説するうえで欠かせない要素でもあるんです。
それでは解説していきましょう。
いろいろ比較してみよう
まずは2つのクリームの成分や価格などを比較していきまます。
まずはサフィールのビーズワックスファインクリーム
成分:ろう、油脂、有機溶剤
種類:乳化性
価格:1,100円
色展開:約80色
続いてサフィールノワールのクレム1925
成分:ろう、油脂、有機溶剤
種類:油性
価格:2,420円
色展開:16色
はい、これだけ見ても良く知らない人が見たら何が何だかわかりません。もうちょっと詳しく説明しますね。お勉強の時間です。
成分
成分に関してはラベルの表記はどちらも「ろう、油脂、有機溶剤」です。ただしろうや油脂の種類であったり配合量が違ってきます。
たとえばビーズワックスファインクリームはビーズワックスやカルナバワックス、アーモンドオイルが配合されています。
ビーズワックスやカルナバワックスは保革やツヤ出し、アーモンドオイルは革に潤いと柔軟性をあたえる効果があり植物性の油のため革の色を濃くしにくいという特徴があります。
対するクレム1925ですがビーズワックスとカルナバワックスは同じですがカルナバワックスの配合量が多くツヤがより出やすい仕様に。そしてこちらにはシアバターが含まれております。
シアバターはバターと言う名前ですが動物の油脂ではなくシアの木の種子から採取される植物性脂肪です。革の奥まで浸透していき保革効果を維持させる特徴があります。
種類
靴クリームは一般的に乳化性か油性かに分類されます。違いについて簡単に説明すると原料の中に水が配合されているかどうかです。
水が含まれていれば乳化性、含まれていなければ油性というふうにお考え下さい。
一般的な乳化性クリームはとろっとしていたりぷるっとしていたりまさにクリーミーなものが多いですがビーズワックスファインクリームは乳化性と言いながら結構固いんです。
これは油分の配合量をかなり多めにしているからで、油分を多めにすることでツヤが出やすいだけでなく多少の防水効果も得られます。
対するクレム1925は油性クリーム。油性といえば缶に入っているワックスで固いイメージですがこちらも油分をかなり多く配合しておりペイスト状です。同じく保革やツヤ出しだけでなく防水効果が得られます。
さらに水分が入っていないため揮発しにくく時間が経ってもクリームが固まることなく使える、革の網状層に長く留まり保革効果が長持ちする、などのメリットもあります。
当店での扱いの違い
さてここまで成分や種類の違いを解説してきましたがだからなんなんだというお声もちらほら。
では当店ではどのように使い分けているのかもお教えしましょう。特別ですよ。
メニューで違う
当店は大まかに分けて3種類のメニューがございます。
汚れ落とし+栄養補給のクイックシャイン、そこにかかととつま先にハイシャインを施すケア&ハイシャイン、つま先かかとだけでなくサイドにもハイシャインを施しソールのケアまで行うスペシャルケア&ハイシャイン。
そのなかでクイックシャインはビーズワックスファインクリーム、それ以上だとクレム1925を使用しております。
理由は至極単純に価格の関係です。クイックシャインが1,200円でハイシャインメニューは2,500円~と価格が違ってきます。
当然高いお金を払ってくれたんだからいいクリーム使わなきゃね、ということです。
まあこれはあくまでもこちら側の都合です。
靴の種類で違う
ハイシャイン以上のメニューになるとクレムを使用すると先述しましたが例外はあります。
まずガラスレザーのお靴。こちらはハイシャインメニューであろうとビーズワックスファインクリームを使用します。(補色の必要のない新しい靴はポリッシュのみで仕上げます)
なぜならガラスレザーは銀面に樹脂のコーティングが施してあるため基本的に油分などは革内部に浸透していきません。したがっていくら高級な保湿成分があろうとほとんど効果がないのです。
あとは補色について。クレム1925に含まれる顔料は粒子が細かく革に浸透して補色します。染料に近い染まり方ですね。これはコーティングされている革との相性はあまり良くありません。
対するビーズワックスファインクリームは顔料の粒子が大きく革の上に乗っかる感じです。なのでガラスレザーの補色もしやすい訳です。
様々な色合いや発色の強い色が多い婦人靴もビーズワックスファインクリームがおすすめです。だから色展開もこちらの方が多いんですね。
使って比べてみよう
では実際に靴に塗って比べてみます。
使う靴はおなじみ「実験くん」ことジャランスリワヤの黒ストレートチップです。
いい感じに色が抜けてくたびれてますね。クリームで栄養補給してあげましょう。
まずはビーズワックスファインクリーム。クリームを塗った後に豚毛でブラッシング、仕上げにフィニッシャーブラシを使用しています。
続いてクレム1925。こちらも塗った後の処理は同じです。
画像で違いが伝わりますでしょうか。
肉眼で見ると結構違うのですがビーズワックスファインクリームはツヤっとしたような光り方でクレムはしっとりとした色気のある光り方です。
補色力はクレムの方がぐっと奥に入って色を補っている感じがありこちらに分があるように思えます。
まとめ
今回はサフィールが販売している2つのクリームの違いについて解説しました。
簡単に違いをまとめると
ビーズワックスファインクリーム・・・価格がお手頃。ガラスレザーの補色や発色の良い婦人靴などが特におすすめ!
クレム1925・・・価格はちょっと高いけどスムースレザーに対する保革、ツヤ出し効果はピカイチ!
と言うような感じです。
自分の靴がガラスレザーであればビーズワックスファインクリーム、スムースレザーであればクレム1925を使用すればより高い効果を得られます。
どちらかのクリームを使うか迷っている方はまず使いたい靴から考えるようにしましょう。
ただどちらにどちらを使っても悪いということはないので参考程度にお考え下さい。そしてわからないことがあればプロに相談しましょう!
おそらく大抵の磨き屋の方は1聞くと10くらい返ってくると思います。聞かれることが嬉しくてしょうがないんでしょうね。
あれ?私だけ?
そんなことはないと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント